腹腔鏡手術と鼠径部切開手術(前方アプローチ)を比較した際、明らかに優れている点は4つあります。
1.両側を観察可能
多くの患者様は右、あるいは左のどちらかの鼠径ヘルニアで受診をします。
しかし、片側のヘルニアがある場合、反対側にもヘルニアとなっているケースが多いです。
術前のエコー検査で反対側にも鼠径ヘルニアが存在するかどうかを確認しますが、微小なヘルニアを完全に同定する事は難しいです。
腹腔鏡手術であれば、腹腔内から反対側の鼠径ヘルニアの有無を直接観察する事が可能です。
反対側にも鼠径ヘルニアがある場合、同時に治療しております。(両側手術と片側手術の手術費用は同じです。)
当院のデータでは、術中に反対側の鼠径ヘルニアをみとめ、両側鼠径ヘルニア修復術を行った方は27.8%でした。
2.すべてのヘルニア門を覆える
鼠径部のヘルニアは外鼠径ヘルニア、内鼠径ヘルニア、大腿ヘルニア、と3つあります。
鼠径部切開法ではそのうちの2つ、外鼠径ヘルニアと内鼠径ヘルニアのヘルニア門をメッシュで覆う事が可能です。
それに対して、腹腔鏡手術は3つのヘルニア門すべてをメッシュで覆う事が可能です。
3.感染を起こしにくい
術後感染は創部の皮下脂肪に生じます。脂肪組織は血流が少ないからです。
腹腔鏡手術は創部が小さいため、露出する脂肪組織の面積が少なく、感染のリスクが低いです。
また、創部感染を生じたとしてもメッシュまで距離があるため、メッシュ感染に至る事はありません。
メッシュに感染が及ぶと、非常に厄介です。
なぜなら、メッシュは人工物であり、血流が殆どいきわたりません。
そのため、メッシュに細菌感染が起きた場合、いくら抗生物質の点滴を行ってもなかなか改善しません。
最終的にはメッシュ除去の手術などが必要になります。
腹腔鏡手術であれば、メッシュに感染を起こすことはまれです。
4.術後の回復
腸蠕動回復までの時間、初回歩行までの時間、経口摂取再開までの時間が早いと言われています。
当院は開院以来、鼠径ヘルニアの手術を100件以上行っていますが、その殆どは腹腔鏡手術です。
手術当日の夜に食事が摂れなかった方はおりません。