皆様こんにちは、大阪うめだ鼠径ヘルニアMIDSクリニックです。
本日ご紹介する研究は、鼠径ヘルニアに対する鼠径部切開法の時に腸骨鼠径神経を切離するかどうか、に関するメタアナリシスです。
タイトルは「Efficacy and safety of ilioinguinal neurectomy in open tension-free inguinal hernia repair: A meta-analysis of randomized controlled trials」
和訳すると「鼠径部切開法による鼠径ヘルニア修復術における腸骨鼠径神経切断術の有効性と安全性: 無作為化比較試験のメタアナリシス」
PMID:37451939
背景
鼠径部切開法による鼠径ヘルニア修復術におけるルーチンの腸骨鼠径神経切断については、いまだに論争がある。
方法
PubMed、Cochrane Library、EMBASEから、鼠径部切開法による鼠径ヘルニア修復術における腸骨鼠径神経切断に関する無作為化対照試験を検索した。メタ解析にはRevman 5.3ソフトウェアを用いた。
結果
メタアナリシスの結果、術後初日の激痛の発生率は、腸脛靭帯神経温存群(INPG)よりも腸脛靭帯神経切除群(ING)の方が低かった[P < 0.0001]。術後1ヵ月目の無痛発生率[P = 0.0004]、術後6ヵ月目の無痛発生率[P < 0.00001]、術後1ヵ月目のしびれ発生率[P = 0.001]は、ING群がINPG群より高かった。術後1ヵ月目の激痛発生率[P=0.20]、術後6ヵ月目のしびれ発生率[P=0.05]、術後1ヵ月目の知覚低下発生率[P=0.15]および術後6ヵ月目の知覚低下発生率[P=0.85]については、両群間に有意差はなかった。
結論
鼠径部切開法による鼠径ヘルニア修復術における腸骨鼠径神経切断は術後疼痛をよりよく予防できる。
COMMENT
筆者も研修医のころに鼠径ヘルニア初執刀の際に教えられました。
「腸骨鼠径神経は切れ」と。
ただ、全例で切っているわけではなく、同定できない症例においては意図的に切断しております。
確実に同定できる場合、周囲組織も少し残した状態で完璧に温存することを目指しています。