皆様こんちには、大阪うめだ鼠径ヘルニアMIDSクリニックです。
鼠径ヘルニアで当院を受診される方の多くから「鼠径ヘルニアになった原因はなんでしょうか」と聞かれる事があります。
人体、特に男性は構造上、鼠径ヘルニアを発症しやすくなっています。しかし、近年の報告(PMID: 28050662, 33189313)では、繊維性コラーゲン合成能が腹壁ヘルニアの発症と関連があると言われている。同様に、大腸切除後の吻合部縫合不全もこれとコラーゲン合成能と関連があると言われています。
本日ご紹介する論文は、鼠径ヘルニアの手術歴と大腸癌術後縫合不全の発生リスクの関連について調べたものです。タイトル「Association between previous inguinal hernia surgery and the risk of anastomotic leakage after colorectal surgery: nationwide registry-based study」
PMID:37650245(Google scholarでも見つけれます)
背景
吻合部の縫合不全は創傷治癒不良と関連しており、これは鼠径ヘルニア患者においても同様の事が言われている。本研究の目的は、鼠径ヘルニア手術の既往が大腸癌手術後の縫合不全のリスクを増加させるかどうかを調査することである。
方法
・デザイン:後向き観察研究
・セッティング:スウェーデンの全国大腸癌登録データベースであるSwedish Hernia Register (SHR)とSwedish Colorectal Cancer Registry (SCRCR)のデータを統合(99%の大腸癌患者をカバー)
・解析:縫合不全をアウトカムとし、ロジスティック回帰モデルを用いて鼠径ヘルニア手術歴のオッズ比を計算。調整変数はDAGを用いて選択。
結果
・期間内で大腸癌手術を受けた患者さんは42762人
・縫合不全は1998人に認められた
・鼠径ヘルニア手術歴あり群の縫合不全は4.8%(97/2041)
・鼠径ヘルニア手術歴なし群の縫合不全は4.7%(1901/40721)
・調整オッズ比は0.90(95%CI: 0.70-1.10)
結論
鼠径ヘルニアの手術歴の有無は、大腸癌の縫合不全に影響がなかった
COMMENT
Direct typeの鼠径ヘルニア(内鼠径ヘルニア)と大腸憩室症の関連は既報で指摘されており、コラーゲンのターンオーバー異常が鼠径ヘルニアの一因であり、それが他疾患も引き起こしている可能性があります。鼠径ヘルニアと他の疾患の関連について深く理解することは、鼠径ヘルニア再発のリスクや、両側鼠径ヘルニアのリスクについて推定できることにつながる可能性があると考えます。腹腔鏡手術の術中に反対側の鼠径ヘルニアの有無を確認します。反対側が全く問題なければ、片側の治療だけにとどめます。
しかし、研究により特定の集団の鼠径ヘルニアリスクが非常に高いと分かった場合、反対側が問題なくとも両側鼠径ヘルニア根治術を施行した方がよい、という事にもなり得ます。それにしても北欧のデータベースはすごいですね。このような質が高いデータベースがあれば様々な研究が進みそうです。
日本は人口が多く、また保険システムのデータ化が遅れていることもあり、なかなか難しいのが歯がゆいです。
本日は「鼠径ヘルニアと他疾患の関連」についての論文を紹介しました。
鼠径ヘルニアは、一見すると軽度な症状に見えることもありますが、放置してしまうと重大な健康リスクを引き起こす可能性があります。
鼠径ヘルニアは、早期発見と適切な治療が肝心です。気になる症状がある場合は、当院にご相談ください。
鼠径ヘルニアの治療については一度ご相談ください
当院は大阪駅直結の鼠径ヘルニアの日帰り手術を専門としたクリニックです。消化器外科専門医と腹腔鏡外科技術認定医による安心安全の腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術を提供いたします。
鼠径ヘルニアは鑑別疾患も多いので「鼠径ヘルニアかどうか分からないけど鼠径部が膨らんでいる」という方も気軽にご相談ください。
平日は21時まで診療し、土日祝日も診療しております。
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